良性腫瘍への放射線治療適応について
エビデンスレベル A
(原文のアブストラクト) Radiother Oncol. 2007 May;83(2):175-7.
Radiotherapy of non-malignant disorders: where do we stand?
(日本語要約) 海外癌医療情報リファレンス PubMed論文抄録
【脳の良性疾患】
動静脈奇形:大規模ランダム化臨床試験などが無いにもかかわらず、ランダム化試験はこれ以上有用性がないとされ専門家のコンセンサスはただちにカテゴリAとされた。この病態では病変の大きさと占拠部位が治療法の選択に重要で、多くの場合手術が選択される。塞栓術は動静脈奇形の閉鎖率が15-20%にしかすぎないが、術中の出血を避けたり放射線治療での治療範囲を狭めることに役立つ。聴神経鞘腫:科学的な論文は多数あるにもかかわらず、ランダム化試験はなされてこなかった。手術、経過観察、放射線治療での選択肢は、腫瘍の大きさ、占拠部位、そして症状による。ランダム化臨床試験はもはや有用ではないため、聴神経鞘腫は総合的な治療が可能で脳神経外科医、神経放射線科医、放射線治療技師が統合チームであたれる施設に限ってカテゴリAとされる。
髄膜腫:文献とR.O. Mirimanoffのデータから完全摘出された髄膜腫に対する術後照射の適応は正当性がないと考えられる。放射線治療は局所再発症例や、視神経鞘や海綿静脈洞に近接した部位の髄膜腫に対してのみ適応が検討される。臨床試験での局所制御率は90%近い。手術不能例で症状のある症例に対しては臨床的な適応があるというコンセンサスである。(カテゴリA)
【発癌の可能性】
幼児期の初期に施行された放射線治療後の発癌についてのスウェーデンの大きなデータベースから、相対リスクは乳癌で1.2、中枢神経系腫瘍で1.42、甲状腺癌で1.97に増大するが、その他全ての腫瘍に関しては放射線治療により発生率が増大しなかったことが示された。カテゴリA:十分なエビデンスが存在する。適応に関しては許容され、日々の臨床レベルで治療を開始しても差し支えない。
小児ガンの場合、大人のガンと比べて悪性腫瘍が圧倒的に多いため、良性腫瘍の放射線治療に関しては、どの程度積極的に行うべきかということは、まだよく分かっていない部分があります。 その中で、大人の良性腫瘍の場合、このような見解となっているようです。
放射線への感受性は、年齢が若いほどに高いことが明らかになっています。 そのため、悪性腫瘍であっても、低年齢、特に、3歳以下の乳幼児に対する脳への放射線照射は、可能な限り避けるべきと考えられています。 3歳以上であっても、年齢が低いほどに脳への影響が大きくなることが明らかになっています。
また、年齢を問わず、成長段階にある女性の乳房は、放射線への感受性が高いことがわかっています。 このため、胸部への高線量の放射線照射は、照射から10年以上後に、乳ガンリスクを高めることが明らかになっています。
とはいえ、再発腫瘍の場合は、良性腫瘍といえども放射線照射が必要となるケースもあります。 その場合は、必ず照射線量とその根拠を確認し、将来起こる可能性のある晩期障害について、充分理解した上で治療を行うようにして頂きたいと思います。
近年、放射線照射による2次ガンを含めた晩期障害は、照射による酸化ストレスが原因とも考えられています。 そのため、照射の影響で発生する過酸化脂質を除去するために重要なセレン(セレニウム)などの微量金属や、α-リノレン酸などの必須脂肪酸を不足しないように摂ることは、その後の晩期障害を最小限にするために有効ではないかと考えられます。
放射線照射後に必要とされる栄養素などの研究は、現在行われているところです。 今後、悪性腫瘍、良性腫瘍ともに放射線照射が増加することが予想されることからも、ますます重要視され、研究が行われるようになると考えられます。
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