カテゴリー「化学療法」の3件の記事

2007年8月22日 (水)

小児ガンの治療によって受ける骨への影響を、小さくするためには

(原文) Children Often Develop Fragile Bones from Cancer and its Treatment  2007年3月6日

(日本語訳) 海外癌医療情報リファレンス NCI会報誌キャンサー・ブレティン

小児は癌や癌治療によって骨が脆弱になる場合が多い 2007年3月12日

主な要因は、メトトレキサートやイホスファミドなどの薬剤を用いた多剤併用化学療法にある。それら薬剤は、「骨に対する毒性が特に強い」と表示されているが、軟部組織腫瘍や骨腫瘍の治療に一般的に用いられている。脳腫瘍ならびに一部の白血病やリンパ腫の小児に対する頭蓋照射は、骨形成に関わる成長ホルモン障害を引き起こす原因になることがある。急性リンパ芽球性白血病は最も一般的な小児癌の1つであり、この癌ではその疾患自体が骨密度を損なう可能性があり、さらに糖質コルチコステロイドの累積投与によって例外なく骨密度が損なわれる。

「小児癌患者の骨密度低下はさまざまな要因によって起こり、それらの改善と予防のためには総合的な方策が必要である」と著者らは結論付ける。さらなる研究が必要となる可能性のある薬剤にはビスフォスホネートとイマチニブがある。その他の方策には、より多くの身体的運動、頭蓋照射総量の制限、カルシウムとビタミンDの摂取量不足の克服が含まれる。

小児ガンの治療では、放射線療法や化学療法が欠かせません。 放射線療法で用いられる高線量の放射線は、骨を形成する骨芽細胞や破骨細胞の成長に影響を与えると考えられます。 また、化学療法で用いられる抗ガン剤の中にも、骨の成長に悪影響を与えるものがいくつかあることが知られています。

キャンサーブレティンの元となった以下の文献では、特にglucocorticosteroids(糖質コルチコステロイド)やmethotrexate(メトトレキサート)や、cranial irradiation(頭蓋への放射線照射)の影響が大きいとあります。

Osteopenia and cancer in children and adolescents: the fragility of success.
Cancer. 2007 Apr 1;109(7):1420-31.

エビデンスレベル B(0)

現在の小児ガンの治療では、これらの薬剤や頭蓋への放射線照射は避けられないもののため、使用する薬剤や放射線量の減量によって治療による骨への影響を減らすことはできても、完全に避けることはできません。

そのため、これらの治療を受けた後は、日ごろから、骨密度を高めるための食事と生活習慣が重要となります。

骨を形成しているのは、主にカルシウムとコラーゲンです。 さらに、食事によって摂ったカルシウム を腸管から効率よく吸収するためには、ビタミンDが必要です。 

そのため、治療後の骨密度を高めるためには、普段の食事にカルシウムやビタミンDを多く含む食品を積極的に取り入れることが大切です。 

カルシウム : 緑色の葉の野菜
          (春:菜花、夏:モロヘイヤ、青ジソ、秋:春菊、冬:ほうれん草、小松菜など)
         小魚や小エビ
         大豆や大豆製品

ビタミンD : 魚介類(鮭、サンマ、サバ、天然のブリ)

ビタミンDは、紫外線を肌に当てることで、体の中で合成することができるビタミンです。 ですから、外遊びを10~20分程度(夏場の紫外線が最も強い時期だと2分程度)することで、1日に必要なビタミンDを合成することができます。

しかし、ここ数年、オゾン層の破壊によって地表に降り注ぐ紫外線量が大幅に増えています。 紫外線に当たることで皮膚ガンを発症するリスクが上昇するため、ビタミンDのためだけに子供に外遊びをさせることは、お勧めできません。 子供でも外で遊ぶ時は日焼け止めを利用するようにし、食事によってビタミンDを摂るようにすることが大切です。 紫外線に関しては、気象庁 紫外線に関する基礎知識が参考になります。

コラーゲンは、タンパク質からできているため、米食をメインに肉や魚、豆類などがバランスよく食べれていれば、ほぼ問題なく摂ることができます。 どうしても摂らせたい場合は、煮魚を作った時にできる「煮こごり」や、鳥の手羽先、さらにゼラチン(ゼラチンは、豚コラーゲンの抽出物です)を味噌汁やスープに混ぜて食べるようにしましょう

(煮こごりを食べさせる時は、塩分過多にならないよう、しょうゆを控えめにしましょう)。

特定の栄養素を多く含む食品を食事に取り込む場合は、食品成分表を利用するようにし、正確な知識を摂りれるようにしましょう。 現在出版されている食品成分表の中で最も新しいものは、5訂増補 食品成分表2007 です。 本屋やAmazon.co.jpなどで販売されているので、家庭に1冊あると心強い存在です。

また、骨密度の増加には、食事だけでなく、運動も必要です。 運動によって骨に刺激が伝わると、骨化を促す骨芽細胞の働きがよくなることがわかっています。 (財)骨粗鬆症財団の骨粗鬆症Q&Aは、参考になるページです。 治療後の体力アップも兼ねて、紫外線の少ない夕方に、親子で散歩や階段上りをする、休日に室内プールにいくなど、穏やかな運動を続けることが大切です。

このようにして、小児ガンの治療によって受けた骨への影響を、最小限にする努力が必要です。

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2007年8月17日 (金)

中程度リスクの神経芽細胞腫の治療期間が短縮可能に

研究デザイン:第3相臨床試験

(要約リストと原文) Less-Intense Chemo Effective in Children with Intermediate-Risk Neuroblastoma 2007年6月13日

(日本語訳) 海外癌医療情報リファレンス NCI臨床試験結果

強度の低い化学療法が中程度のリスクの小児神経芽細胞腫に有効 2007年6月13日

中程度の再発リスクのある神経芽細胞腫を持ち、より強度の低い化学療法を受けている乳児および小児患者は、過去の臨床試験結果の、より強度が高く毒性の強い治療を受けた患者と比較すると、3年全生存率は同等でした。

(方法) 1997年3月から2005年5月の間、この一群のみの第3相臨床試験(以下、A3961とする)では、オーストラリア、ニュージーランド、北米の病院から、中程度の再発リスクの神経芽細胞腫を持つ該当患者を467名登録しました。

この試験は、対照として過去の患者群での結果を用いています。 つまり、Children’s Cancer Groupによって行われた、1989年から1996年の間、より強度の高い化学療法薬剤を投与された、A3961とよく似た構成の神経芽細胞腫の患者群(以下、CCG3881)での試験結果と比較しました。

神経芽細胞腫は、16歳以下の子供で4番目に多く発症する小児ガンです。 副腎や頸部、胸部、脊椎などの、未成熟な神経細胞で発生し、患者の年齢や転移の度合い、腫瘍にみられる遺伝子変異などに応じて、神経芽細胞腫の治療後の再発リスクは低・中・高に分類されます。

日本でも、数年前までは、生後7ヶ月の赤ちゃんに対して、おしっこによるスクリーニングが行われていました。 ところが最近では、病気が見つかっても自然消滅するような再発リスクの低いケースが多いことがわかってきたことから、スクリーニングは行われなくなりました。 

上の息子の時は、まだスクリーニングが行われていて、時期が来ると家におしっこをしみこませるためのろ紙のようなものが送られてきました。 オムツをした赤ちゃんのおしっこなんて、一体どうやって採ればいいの?と、途方にくれたのを覚えています。

スクリーニングも終了となり、発症率の割りに悪性度が高くないとはいうものの、神経芽細胞腫で命を落とすお子さんも多いです。 そのため、再発リスクの高い子供に対する化学療法の工夫が必要とされていました。

今回、オーストラリア、ニュージーランド、北米(アメリカとカナダ)で行われた臨床試験では、再発リスクが中程度の神経芽細胞腫をもつ患児に対して、『短期&強度の低い化学療法が、現行の強い薬剤での治療と同じくらい再発を防ぎ、また生存率を上昇させることが可能かどうか』について試験が行われました。

その結果、治療期間及び、治療を行った時間が大幅に短縮できることが明らかになっています。 しかし、今回行われた治療による晩期障害(長期的な毒性)については、明らかになっていません。

長い目で見てどちらがいいかは、現在の段階ではわからないということですが、治療期間の大幅な短縮は、患児や患児の家族にとっては心身の負担を減らす大きな前進となると考えられます。

治療による治癒率の上昇や延命期間の延長、そして晩期障害の軽減も重要なことですが、多感で成長著しい小さな子供が病院に押し込められ、苦痛を感じる時間が少しでも短くなることは、とても大きな意義を持つと考えられます。 日本でもこの治療法の臨床試験が行われることが期待されています。

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アメリカで小児ガン患児のための神経認知問題に対するガイドラインが設定

(原文) 米国国立癌研究所(NCI)発行、キャンサーブレティンの2007年8月7日号

Cancer Research Highlights

(日本語訳) 海外癌医療情報リファレンス 米国国立癌研究所(NCI)のオンライン誌日本語版 2007年8月12日

小児癌サバイバーの神経認知問題に対するガイドライン

小児腫瘍グループ(COG: Children’s Oncology Group)の作業部会は最近、長期的で、リスクに基づいた、暴露に応じたガイドラインを出版した。

最大のリスクは、脳腫瘍と最も一般的な小児癌である急性リンパ性白血病の患児サバイバーである。

これらの提言は、COG Long-Term Follow-Up Guidelines Task Force on Neurocognitive/Behavioral Complications After Childhood Cancerから出された。これらはArchives of Pediatrics and Adolescent Medicine誌8月号に掲載されている。このガイドラインは、全ての長期フォローアップガイドラインを含んでいるCOGの基本資料でも見ることができる。

小児脳腫瘍は、手術や脳への放射線照射に加え、メトトレキセートなどの抗がん剤の髄注を行う場合があります。 また、小児白血病も、脊椎および脳転移が起こりやすいことから、予防的な脳への放射線照射やメトトレキセートなどの抗がん剤の髄駅注を行う場合があります。 これらは、脳に何らかの影響を与える可能性があります。

これらによる影響は、いわゆる晩期障害として、治療後数年から数十年経過することで現れてくることで知られています。 しかし、いつ、どのような形で現れてくるかはわかっていません。

そのため、患児や家族に対する長期的なフォローアップが必要とされています。

今回、アメリカで発表されたガイドラインは、治療後の患児に必要な検査、必要な介入(介護やリハビリなど)に関する提言となっています。 日本語訳はありませんが、晩期障害に不安を持つ方の参考になるのではないでしょうか。 患児の主治医に、このガイドラインに目を通してもらうこともよいかもしれません。

(原文) Guidelines for Identification of, Advocacy for, and Intervention in Neurocognitive Problems in Survivors of Childhood Cancer

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