カテゴリー「放射線療法」の3件の記事

2007年8月24日 (金)

良性腫瘍への放射線治療適応について

エビデンスレベル A

(原文のアブストラクト) Radiother Oncol. 2007 May;83(2):175-7.

Radiotherapy of non-malignant disorders: where do we stand?

(日本語要約) 海外癌医療情報リファレンス PubMed論文抄録

良性疾患の放射線治療:現時点で我々はどういう見解か?

【脳の良性疾患】
動静脈奇形:大規模ランダム化臨床試験などが無いにもかかわらず、ランダム化試験はこれ以上有用性がないとされ専門家のコンセンサスはただちにカテゴリAとされた。この病態では病変の大きさと占拠部位が治療法の選択に重要で、多くの場合手術が選択される。塞栓術は動静脈奇形の閉鎖率が15-20%にしかすぎないが、術中の出血を避けたり放射線治療での治療範囲を狭めることに役立つ。

聴神経鞘腫:科学的な論文は多数あるにもかかわらず、ランダム化試験はなされてこなかった。手術、経過観察、放射線治療での選択肢は、腫瘍の大きさ、占拠部位、そして症状による。ランダム化臨床試験はもはや有用ではないため、聴神経鞘腫は総合的な治療が可能で脳神経外科医、神経放射線科医、放射線治療技師が統合チームであたれる施設に限ってカテゴリAとされる。

髄膜腫:文献とR.O. Mirimanoffのデータから完全摘出された髄膜腫に対する術後照射の適応は正当性がないと考えられる。放射線治療は局所再発症例や、視神経鞘や海綿静脈洞に近接した部位の髄膜腫に対してのみ適応が検討される。臨床試験での局所制御率は90%近い。手術不能例で症状のある症例に対しては臨床的な適応があるというコンセンサスである。(カテゴリA)

【発癌の可能性】
幼児期の初期に施行された放射線治療後の発癌についてのスウェーデンの大きなデータベースから、相対リスクは乳癌で1.2、中枢神経系腫瘍で1.42、甲状腺癌で1.97に増大するが、その他全ての腫瘍に関しては放射線治療により発生率が増大しなかったことが示された。

カテゴリA:十分なエビデンスが存在する。適応に関しては許容され、日々の臨床レベルで治療を開始しても差し支えない。

小児ガンの場合、大人のガンと比べて悪性腫瘍が圧倒的に多いため、良性腫瘍の放射線治療に関しては、どの程度積極的に行うべきかということは、まだよく分かっていない部分があります。 その中で、大人の良性腫瘍の場合、このような見解となっているようです。

放射線への感受性は、年齢が若いほどに高いことが明らかになっています。 そのため、悪性腫瘍であっても、低年齢、特に、3歳以下の乳幼児に対する脳への放射線照射は、可能な限り避けるべきと考えられています。 3歳以上であっても、年齢が低いほどに脳への影響が大きくなることが明らかになっています。

また、年齢を問わず、成長段階にある女性の乳房は、放射線への感受性が高いことがわかっています。 このため、胸部への高線量の放射線照射は、照射から10年以上後に、乳ガンリスクを高めることが明らかになっています。

とはいえ、再発腫瘍の場合は、良性腫瘍といえども放射線照射が必要となるケースもあります。 その場合は、必ず照射線量とその根拠を確認し、将来起こる可能性のある晩期障害について、充分理解した上で治療を行うようにして頂きたいと思います。

近年、放射線照射による2次ガンを含めた晩期障害は、照射による酸化ストレスが原因とも考えられています。 そのため、照射の影響で発生する過酸化脂質を除去するために重要なセレン(セレニウム)などの微量金属や、α-リノレン酸などの必須脂肪酸を不足しないように摂ることは、その後の晩期障害を最小限にするために有効ではないかと考えられます。

放射線照射後に必要とされる栄養素などの研究は、現在行われているところです。 今後、悪性腫瘍、良性腫瘍ともに放射線照射が増加することが予想されることからも、ますます重要視され、研究が行われるようになると考えられます。

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2007年8月22日 (水)

小児ガンの治療によって受ける骨への影響を、小さくするためには

(原文) Children Often Develop Fragile Bones from Cancer and its Treatment  2007年3月6日

(日本語訳) 海外癌医療情報リファレンス NCI会報誌キャンサー・ブレティン

小児は癌や癌治療によって骨が脆弱になる場合が多い 2007年3月12日

主な要因は、メトトレキサートやイホスファミドなどの薬剤を用いた多剤併用化学療法にある。それら薬剤は、「骨に対する毒性が特に強い」と表示されているが、軟部組織腫瘍や骨腫瘍の治療に一般的に用いられている。脳腫瘍ならびに一部の白血病やリンパ腫の小児に対する頭蓋照射は、骨形成に関わる成長ホルモン障害を引き起こす原因になることがある。急性リンパ芽球性白血病は最も一般的な小児癌の1つであり、この癌ではその疾患自体が骨密度を損なう可能性があり、さらに糖質コルチコステロイドの累積投与によって例外なく骨密度が損なわれる。

「小児癌患者の骨密度低下はさまざまな要因によって起こり、それらの改善と予防のためには総合的な方策が必要である」と著者らは結論付ける。さらなる研究が必要となる可能性のある薬剤にはビスフォスホネートとイマチニブがある。その他の方策には、より多くの身体的運動、頭蓋照射総量の制限、カルシウムとビタミンDの摂取量不足の克服が含まれる。

小児ガンの治療では、放射線療法や化学療法が欠かせません。 放射線療法で用いられる高線量の放射線は、骨を形成する骨芽細胞や破骨細胞の成長に影響を与えると考えられます。 また、化学療法で用いられる抗ガン剤の中にも、骨の成長に悪影響を与えるものがいくつかあることが知られています。

キャンサーブレティンの元となった以下の文献では、特にglucocorticosteroids(糖質コルチコステロイド)やmethotrexate(メトトレキサート)や、cranial irradiation(頭蓋への放射線照射)の影響が大きいとあります。

Osteopenia and cancer in children and adolescents: the fragility of success.
Cancer. 2007 Apr 1;109(7):1420-31.

エビデンスレベル B(0)

現在の小児ガンの治療では、これらの薬剤や頭蓋への放射線照射は避けられないもののため、使用する薬剤や放射線量の減量によって治療による骨への影響を減らすことはできても、完全に避けることはできません。

そのため、これらの治療を受けた後は、日ごろから、骨密度を高めるための食事と生活習慣が重要となります。

骨を形成しているのは、主にカルシウムとコラーゲンです。 さらに、食事によって摂ったカルシウム を腸管から効率よく吸収するためには、ビタミンDが必要です。 

そのため、治療後の骨密度を高めるためには、普段の食事にカルシウムやビタミンDを多く含む食品を積極的に取り入れることが大切です。 

カルシウム : 緑色の葉の野菜
          (春:菜花、夏:モロヘイヤ、青ジソ、秋:春菊、冬:ほうれん草、小松菜など)
         小魚や小エビ
         大豆や大豆製品

ビタミンD : 魚介類(鮭、サンマ、サバ、天然のブリ)

ビタミンDは、紫外線を肌に当てることで、体の中で合成することができるビタミンです。 ですから、外遊びを10~20分程度(夏場の紫外線が最も強い時期だと2分程度)することで、1日に必要なビタミンDを合成することができます。

しかし、ここ数年、オゾン層の破壊によって地表に降り注ぐ紫外線量が大幅に増えています。 紫外線に当たることで皮膚ガンを発症するリスクが上昇するため、ビタミンDのためだけに子供に外遊びをさせることは、お勧めできません。 子供でも外で遊ぶ時は日焼け止めを利用するようにし、食事によってビタミンDを摂るようにすることが大切です。 紫外線に関しては、気象庁 紫外線に関する基礎知識が参考になります。

コラーゲンは、タンパク質からできているため、米食をメインに肉や魚、豆類などがバランスよく食べれていれば、ほぼ問題なく摂ることができます。 どうしても摂らせたい場合は、煮魚を作った時にできる「煮こごり」や、鳥の手羽先、さらにゼラチン(ゼラチンは、豚コラーゲンの抽出物です)を味噌汁やスープに混ぜて食べるようにしましょう

(煮こごりを食べさせる時は、塩分過多にならないよう、しょうゆを控えめにしましょう)。

特定の栄養素を多く含む食品を食事に取り込む場合は、食品成分表を利用するようにし、正確な知識を摂りれるようにしましょう。 現在出版されている食品成分表の中で最も新しいものは、5訂増補 食品成分表2007 です。 本屋やAmazon.co.jpなどで販売されているので、家庭に1冊あると心強い存在です。

また、骨密度の増加には、食事だけでなく、運動も必要です。 運動によって骨に刺激が伝わると、骨化を促す骨芽細胞の働きがよくなることがわかっています。 (財)骨粗鬆症財団の骨粗鬆症Q&Aは、参考になるページです。 治療後の体力アップも兼ねて、紫外線の少ない夕方に、親子で散歩や階段上りをする、休日に室内プールにいくなど、穏やかな運動を続けることが大切です。

このようにして、小児ガンの治療によって受けた骨への影響を、最小限にする努力が必要です。

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2007年8月17日 (金)

アメリカで小児ガン患児のための神経認知問題に対するガイドラインが設定

(原文) 米国国立癌研究所(NCI)発行、キャンサーブレティンの2007年8月7日号

Cancer Research Highlights

(日本語訳) 海外癌医療情報リファレンス 米国国立癌研究所(NCI)のオンライン誌日本語版 2007年8月12日

小児癌サバイバーの神経認知問題に対するガイドライン

小児腫瘍グループ(COG: Children’s Oncology Group)の作業部会は最近、長期的で、リスクに基づいた、暴露に応じたガイドラインを出版した。

最大のリスクは、脳腫瘍と最も一般的な小児癌である急性リンパ性白血病の患児サバイバーである。

これらの提言は、COG Long-Term Follow-Up Guidelines Task Force on Neurocognitive/Behavioral Complications After Childhood Cancerから出された。これらはArchives of Pediatrics and Adolescent Medicine誌8月号に掲載されている。このガイドラインは、全ての長期フォローアップガイドラインを含んでいるCOGの基本資料でも見ることができる。

小児脳腫瘍は、手術や脳への放射線照射に加え、メトトレキセートなどの抗がん剤の髄注を行う場合があります。 また、小児白血病も、脊椎および脳転移が起こりやすいことから、予防的な脳への放射線照射やメトトレキセートなどの抗がん剤の髄駅注を行う場合があります。 これらは、脳に何らかの影響を与える可能性があります。

これらによる影響は、いわゆる晩期障害として、治療後数年から数十年経過することで現れてくることで知られています。 しかし、いつ、どのような形で現れてくるかはわかっていません。

そのため、患児や家族に対する長期的なフォローアップが必要とされています。

今回、アメリカで発表されたガイドラインは、治療後の患児に必要な検査、必要な介入(介護やリハビリなど)に関する提言となっています。 日本語訳はありませんが、晩期障害に不安を持つ方の参考になるのではないでしょうか。 患児の主治医に、このガイドラインに目を通してもらうこともよいかもしれません。

(原文) Guidelines for Identification of, Advocacy for, and Intervention in Neurocognitive Problems in Survivors of Childhood Cancer

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